一番短い法話

「けるかる。」
以上です。(おわり)
先輩布教使、それも大先生のお話だった記憶があるのですが、どうしても名前を思い出せません。
ある所で、有名な先生方3人がお話をする中で、3番目の先生が「けるかる」といったお話をされて、お話を終えられました。
ウソのような話ですが、これは聞いた話です。ですので、本当か分かりません。
まず、このような短い法話となった経緯ですが、3人の先生の講演があり、
一人目の先生のお話が予定より長くなり、そして二人目の先生も時間通りに終わらなくて、
三人目の先生がお話をする予定だった時間が、どんどん短くなっていったそうです。
そうして、ようやく出番となったときに、そこのご住職さんから大変申し訳無さそうに、
終わりの時間も迫っているので、ご法義を一言でお願いしますと言われたようです。
一言で、浄土真宗のご法義を伝えると言っても、阿弥陀様・信心・お救い、お浄土様々な言葉があります。
普通に伝えるだけでも難しいものを、一言でと言われたのでありますから、さぁ大変です。
みなさまなら、一言で何を伝えられるでしょう。普通、一言と言われても多少お話をするのが普通かと
思いますが、その先生は一味も二味も違いました。
登壇するなり、ご門徒をご覧になり「ける、かる」とお話して、肝要のご文章を拝読し、降壇されたようです。
一瞬の出来事に、ご門徒もざわざわとしています。驚いたご住職がその先生のいらっしゃる講師控室に向って
訳を聞かれたようです。
「一言と言われたので、一言で話したのですよ」と言われ、ご住職はさっぱり分かりません。
詳しく聞いてみると、このようでありました。
「ける」とは、阿弥陀様のお喚び声、はたらきです。それは、私の行為や成果に関わらず、必ず救ってくださる。
阿弥陀様は助けるの仏さま、つまり、【助(ける)】とおっしゃるのです。
そして、「かる」とは、私の上での話です。その阿弥陀様のお救いに私たちの疑心やはからいを挟む余地はありません。
ですので、私は、ただ助かるのみです。つまり、私は【助(かる)】とおっしゃられたのです。
阿弥陀様が私を助ける(救う)とおっしゃられるのだから、私はただ助かる(救われる)だけなのです。
というお話を、「ける、かる」と一言お話されたのでありました。
私が法話を聞いた中で、一番短い法話が「ける、かる」です。これ以上短い法話を聞いたことがありません。
けれども、その「ける、かる」に込められた阿弥陀様のお心、そしてこの身の上に条件は問わないお救いだと
確かに受け取ることが出来た「深~い、深~い」お話でした。
解説があって初めて分かるお話ですね。本当に法話とは面白いものです。
もし時間がない中で、お話をするときは、ぜひ「ける、かる」とお話されてはいかがでしょうか。

-法話

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