聞き慣れないお経の名前ですね。けれども、浄土真宗のお葬儀に参列された方なら聞いたことあるはずです。
浄土真宗本願寺派では「帰三宝偈」(きさんぼうげ)と言い、
真宗大谷派では「観衆偈」と言います。この二つの違いについては、また今度。
それでは原文と書き下し文と現代語訳を見ていきましょう。
そもそも、帰三宝偈とは
帰三宝偈(観衆偈) 原文・読み方 |
書き下し文 | 現代語訳 | |
1 | 道俗時衆等 | 道俗の時衆等 | 出家した僧侶であっても、またそうでない者でも、すべての人々よ |
どうぞくじしゅとう | |||
2 | 各発無上心 | おのおの無上心を発せ | おのおの無上の信心をおこしなさい |
かくほつむじょうしん | |||
3 | 生死甚難厭 | 生死はなはだ厭ひがたく | 生まれ死ぬことを、避け嫌うことによって |
しょうじじんなんねん | |||
4 | 仏法復難欣 | 仏法また欣ひがたし | また仏法はあい難いものである |
ぶっぽうぶなんごん | |||
5 | 共発金剛志 | ともに金剛の志を発して | ともにゆるぎない金剛の信心をおこして |
ぐほつこんごうし | |||
6 | 横超断四流 | 横に四流を超断すべし | よこさまな迷いの世界を断ち切り |
おうちょうだんしる | |||
7 | 願入弥陀界 | 弥陀界に入らんと願じて | 弥陀の浄土に行くことを願って |
がんにゅうみだかい | |||
8 | 帰依合掌礼 | 帰依し合掌し礼したてまつれ | 我が身を任せ信じ合掌・礼拝せよ |
きえがっしょうらい | |||
9 | 世尊我一心 | 世尊、われ一心に | 世尊、私は一心に |
せそんがいっしん | |||
10 | 帰命尽十方 | 尽十方の~~~~帰命したてまつる | 十方世界の |
きみょうじんじっぽう | ※帰命は後ほど出てくる | ||
11 | 法性真如海 | 法性真如海と | 法性真如海 |
ほっしょうしんにょかい | |||
12 | 報化等諸仏 | 報化等の諸仏と | 報身・化身などの諸仏と |
ほうけとうしょぶつ | |||
13 | 一一菩薩身 | 一々の菩薩身と | 一々の菩薩身と |
いついちぼさつしん | |||
14 | 眷属等無量 | 眷属等の無量なると | 縁ある方々等の無量の |
けんぞくとうむりょう | |||
15 | 荘厳及変化 | 荘厳および変化と | 荘厳および変化と |
しょうごんぎゅうへんげ | |||
16 | 十地三賢海 | 十地と三賢海と | 十地ならびに凡夫の人々と |
じゅうじさんげんかい | |||
17 | 時劫満未満 | 時劫の満と未満と | 時劫の満ちたものと満たないもの |
じこうまんみまん | |||
18 | 智行円未円 | 智行の円と未円と | 智行がまどかなものと、まどかでないもの |
ちぎょうえんみえん | |||
19 | 正使尽未尽 | 正使の尽と未尽と | 煩悩の尽きたものと尽きないもの |
しょうじじんみじん | |||
20 | 習気亡未亡 | 習気の亡と未亡と | 煩悩の正体である正使がなくなっても残る習慣の気が亡くなったものと、亡くならないもの |
じゅっけもうみもう | |||
21 | 功用無功用 | 功用と無功用と | 有功用のものと無功用のもの |
くゆうむくゆう | |||
22 | 証智未証智 | 証智と未証智と | 悟ったものと、いまだ悟っていないものと |
しょうちみしょうち | |||
23 | 妙覚及等覚 | 妙覚および等覚の | 妙覚や等覚といったすでにさとりに近い存在の方でも |
みょうがくぎゅうとうがく | |||
24 | 正受金剛心 | まさしく金剛心を受け | まさしくゆるがない阿弥陀様の智慧のはたらきによって |
しょうじゅこんごうしん | |||
25 | 相応一念後 | 相応する一念の後 | それらのはたらきが一念として届いた後には |
そうおういちねんご | |||
26 | 果徳涅槃者 | 果徳涅槃のものに帰命したてまつる | 果徳涅槃であるものに帰依したてまつれ |
かとくねはんしゃ | |||
27 | 我等咸帰命 | われらことごとく | われらのごとく |
がとうげんきみょう | |||
28 | 三仏菩提尊 | 三仏菩提の尊に帰命したてまつる | 三仏菩提に帰依したてまつる |
さんぶつぼだいそん | |||
29 | 無礙神通力 | 無礙の神通力をもつて | 何ものにも妨げられることのない神通力によって |
むげじんずうりき | |||
30 | 冥加願摂受 | 冥に加して願はくは摂受したまへ | 願わくは冥衆に加護して摂めたまえ |
みょうががんしょうじゅ | |||
31 | 我等咸帰命 | われらことごとく | われらのごとく |
がとうげんきみょう | |||
32 | 三乗等賢聖 | 三乗等の賢聖の | 三乗などの賢聖の |
さんじょうとうげんしょう | |||
33 | 学仏大悲心 | 仏の大悲心を学して | 仏になる大悲を学して |
がくぶつだいひしん | |||
34 | 長時無退者 | 長時に退することなきものに帰命したてまつる | その尊い位から転じ落ちることのない方に帰依したてまつる |
じょうじむたいしゃ | |||
35 | 請願遥加備 | 請ひ願はくははるかに加備したまへ | 請い願わくば遥かに加護し |
しょうがんようかび | |||
36 | 念念見諸仏 | 念々に諸仏を見たてまつらん | 念々に諸仏をみせしめたまえ |
ねんねんけんしょうぶつ | |||
37 | 我等愚痴身 | われら愚痴の身 | 我ら愚かな凡夫の身であれば |
がとうぐちしん | |||
38 | 曠劫来流転 | 曠劫よりこのかた流転して | 長い長い昔から迷いを続け地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間界・天界を輪廻してきた |
こうごうらいるてん | |||
39 | 今逢釈迦仏 | いま釈迦仏の | 今、釈迦牟尼仏の |
こんぶしゃかぶつ | |||
40 | 末法之遺跡 | 末法の遺跡たる | 末法といわれる正しい修行者や悟りの者がこの世にいない現代に残された |
まっぽうしゆいしゃく | |||
41 | 弥陀本誓願 | 弥陀の本誓願 | 阿弥陀如来の本願 |
みだほんぜいがん | |||
42 | 極楽之要門 | 極楽の要門に逢へり | これだけが極楽浄土に入ることが出来るたった一つの方法に逢えた |
ごくらくしようもん | |||
43 | 定散等廻向 | 定散等しく回向して | 定善・散善をひとしく廻向して |
じょうさんとうえこう | |||
44 | 速証無生身 | すみやかに無生の身を証せん | すみやかに無生の身をさとる |
そくしょうむしょうしん | |||
45 | 我依菩薩蔵 | われ菩薩蔵 | われは菩薩蔵であり |
がえぼさつぞう | |||
46 | 頓教一乗海 | 頓教、一乗海によりて | 頓教である一乗の教えによって |
とんぎょういちじょうかい | |||
47 | 説偈帰三宝 | 偈を説きて三宝に帰して | 偈をつくり、三宝に帰依したてまつり |
せつげきさんぼう | |||
48 | 与仏心相応 | 仏心と相応せん | 仏様のお心と相応し |
よぶつしんそうおう | |||
49 | 十方恒沙仏 | 十方恒沙の仏 | 十方恒沙の数限りない仏たち |
じっぽうごうじゃぶつ | |||
50 | 六通照知我 | 六通をもつてわれを照知したまへ | 六神通をもってわれを照覧したまえ |
ろくつうしょうちが | |||
51 | 今乗二尊教 | いま二尊(釈尊・阿弥陀仏)の教に乗じて | 今、釈迦・弥陀二尊の教によって |
こんじょうにそんぎょう | |||
52 | 広開浄土門 | 広く浄土の門を開く | 広く浄土の法門を明らかにする |
こうかいじょうどもん | |||
53 | 願以此功徳 | 願はくはこの功徳をもつて | 願わくはこの尊い功徳をもって |
がんにしくどく | |||
54 | 平等施一切 | 平等に一切に施し | すべての人々に与え施し |
びょうどうせいいっさい | |||
55 | 同発菩提心 | 同じく菩提心を発して | もろともに信心をおこして |
どうほつぼだいしん | |||
56 | 往生安楽国 | 安楽国に往生せん | 安楽国に往生しよう |
おうじょうあんらっこく |
最後にある
願以此功徳(がんにしくどく)
平等施一切(びょうどうせいいっさい)
同発菩提心(どうほつぼだいしん)
往生安楽国(おうじょうあんらっこく)
これらは、「正信偈」「讃仏偈」「重誓偈」「阿弥陀経」でも最後の一節に登場します。
すべてのお経の最後には、この善導大師の『観経疏』の言葉が引用されていたということが分かります。
「帰三宝偈」とは、聞き慣れないお経だと思いますが、こんなに身近なお経だったとは驚きですね。