正信偈

解説と現代語訳

「正信念仏偈」は、親鸞聖人(1173年〜1263年)が90年の生涯をかけて作られた著書『教行信証』(全六巻本)の第2巻「行巻」の末尾に掲載されている。一般には「正信偈(しょうしんげ)」の名で親しまれている。真宗の要義大綱を七言60行120句の偈文にまとめたものである。
親鸞聖人撰述の『三帖和讃』とともに、本願寺第8世蓮如(1415年〜1499年)によって、僧俗の間で朝暮の勤行としてお勤めするよう制定され、現在も行われている。
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そもそも正信偈とは何でしょうか。

帰敬序

正信偈御文・書き下し文しんじんのうた現代語訳
1帰命無量寿如来
きみょうむりょうじゅにょらい
ひかりといのちきわみなき限りない命の如来に帰命し
無量寿如来に帰命し
2南無不可思議光
なもふかしぎこう
阿弥陀ほとけを仰がなん思いはかることのできない光の如来に帰依したてまつる
不可思議光に南無したてまつる

依経段

3法蔵菩薩因位時
ほうぞうぼさついんにじ
法蔵比丘のいにしえに法蔵菩薩の因位のときに
法蔵菩薩の因位時
4在世自在王仏所
ざいせじざいおうぶつしょ)
世自在王のみもとにて世自在王仏のみもとで
世自在王仏の所にましまして
5覩見諸仏浄土因
とけんしょぶつじょうどいん
諸仏浄土の因たずね仏がたの浄土の成り立ちや
諸仏の浄土の因
6国土人天之善悪
こくどにんでんしぜんまく
人天のよしあしみそなわしその国土や人間や神々の善し悪しをご覧になって
国土人天の善悪を覩見して
7建立無上殊勝願
こんりゅうむじょうしゅしょうがん
すぐれた願を建てたまいこの上なくすぐれた願をおたてになり
無上殊勝の願を建立し
8超発希有大弘誓
ちょうほつけうだいぐぜい
まれなる誓いおこします世にもまれな大いなる誓いをおこされた
希有の大弘誓を超発せり
9五劫思惟之摂受
ごこうしゆいししょうじゅ
ながき思惟の時へてぞ五劫もの長い間思惟してこの誓願を選び取り
五劫これを思惟して摂受す
10重誓名声聞十方
じゅうせいみょうしょうもんじっぽう
この願選び取りませり名号をすべての世界に聞えさせようと重ねて誓われたのである
重ねて誓ふらくは、名声十方に聞えんと
11普放無量無辺光
ふほうむりょうむへんこう
かさねてさらに誓うらく本願を成就された仏は、無量光・無辺光・無礙光・無対光・炎王光・清浄光・歓喜光・智慧光・不断光・難思光・無称光・超日月光とたたえられる光明を放って
あまねく無量・無辺光
12無碍無対光炎王
むげむたいこうえんのう
わが名よひろく聞えかし
無礙・無対・光炎王
13清浄歓喜智慧光
しょうじょうかんぎちえこう
十二のひかり放ちては
清浄・歓喜・智慧光
14不断難思無称光
ふだんなんじむしょうこう
あまたの国を照らします
不断・難思・無称光
15超日月光照塵刹
ちょうにちがっこうしょうじんせつ
生きとしいくるものすべて
超日月光を放ちて塵刹を照らす
16一切群生蒙光照
いっさいぐんせいもうみつてる
このみひかりのうちにあり広くすべての国々を照らし、すべての衆生はその光明に照らされる
一切の群生、光照を蒙る
17本願名号正定業
ほんがんみょうごうしょうじょうごう
本願成就のそのみ名を本願成就の名号は衆生が間違いなく往生するための行であり
本願の名号は正定の業なり
18至心信楽願為因
ししんしんぎょうがんにいん
信ずるこころひとつにて至心信楽の願[(第十八願)]に誓われている信を往生の正因とする
至心信楽の願(第十八願)を因とす
19成等覚証大涅槃
じょうとうがくしょうだいねはん
ほとけのさとりひらくこと正定聚の位につき、浄土に往生してさとりを開くことができるのは
等覚を成り大涅槃を証することは
20必至滅度願成就
ひっしめつどがんじょうじゅ
願い成りたるしるしなり必至滅度の願[(第十一願)]が成就されたことによる
必至滅度の願(第十一願)成就なり
21如来所以興出世
にょらいしょいこうしゅっせ
教主世尊は弥陀仏の如来が世に出られるのは、
如来、世に興出したまうゆえは
22唯説弥陀本願海
ゆいせつみだほんがんかい
誓い説かんと生れたもうただ阿弥陀仏の本願一乗海の教えを説くためである
ただ弥陀の本願海を説かんとなり
23五濁悪時群生海
ごじょくあくじぐんじょうかい
にごりの世にしまどうもの五濁の世の人々は
五濁悪時の群生海
24応信如来如実言
おうしんにょらいにょじつごん
おしえのまこと信ずべし釈尊のまことの教えを信じるがよい
如来如実の言を信ずべし
25能発一念喜愛心
のうほついちねんきあいしん)
信心ひとたび おこりなば信をおこして、阿弥陀仏の救いを喜ぶ人は
よく一念喜愛の心を発すれば
26不断煩悩得涅槃
ふだんぼんのうとくねはん
煩悩を断たで 涅槃あり自らの煩悩を断ちきらないまま、浄土でさとりを得ることができる
煩悩を断ぜずして涅槃をうるなりナヤミ       スクイ
27凡聖逆謗斉回入
ぼんじょうぎゃくほうさいえにゅう
水とうしおと なるがごと凡夫も聖者も、五逆のものも謗法のものも、みな本願海に入れば
凡聖逆謗ひとしく回入すれば
28如衆水入海一味
にょしゅしいにゅうかいいちみ
凡夫とひじり 一味なりどの川の水も海に入ると一つの味になるように、等しく救われる
衆水、海にいりて一味なるがごとし
29摂取心光常照護
せっしゅしんこうじょうしょうご
摂取のひかり あきらけく阿弥陀仏の光明はいつも衆生を摂め取ってお護りくださる
摂取の心光つねに照護したもうスクイ
30已能雖破無明闇
いのうすいはむみょうあん
無明の闇 晴れ去るもすでに無明の闇は晴れても
すでによく無明の闇を破すといえどもウタガイ
31貪愛瞋憎之雲霧
とんないしんぞうしうんむ
まどいの雲は 消えやらで貪りや怒りの雲や霧は、
貪愛瞋憎の雲霧
32常覆真実信心天
じょうふしんじつしんじんてん
つねに信心の そら覆ういつもまことの信心の空をおおっている
つねに真実信心の天におおえり    マコト
33譬如日光覆雲霧
ひにょにっこうふうんむ
よし日の雲に 隠るともしかし、たとえば日光が雲や霧にさえぎられても、
たとえば日光の雲霧におおわれども
34雲霧之下明無闇
うんむしげみょうむあん
下の闇なき ごとくなりその下は明るく闇がないと同じである
雲霧の下あきらかにして闇なきがごとし
35獲信見敬大慶喜
ぎゃくしんけんきょうだいきょうき
信心よろこび うやまえば信を得て大いに喜び敬う人は
信をえて見て敬い大きに慶喜すれば
36即横超截五悪趣
そくおうちょうぜつごあくしゅ
迷いの道は たちきられただちに本願力によって迷いの世界のきずなが断ち切られる
すなわち横に五悪趣を超載す
37一切善悪凡夫人
いっさいぜんまくぼんぶにん
ほとけの誓い 信ずれば善人も悪人も、どのような凡夫であっても
一切善悪の凡夫人
38聞信如来弘誓願
もんしんにょらいぐぜいがん
いとおろかなる ものとても阿弥陀仏の本願を信じれば
如来の弘誓願を聞信すれば
39仏言広大勝解者
ぶつごんこうだいしょうげしゃ
すぐれし人を ほめたまい仏はこの人をすぐれた智慧を得たものであるとたたえ
仏、広大勝解のひととのたまえり
40是人名分陀利華
ぜにんみょうふんだりけ
白蓮華とぞ たたえます汚れのない白い蓮の花のような人とおほめになる
このひとを分陀利華と名づく
41弥陀仏本願念仏
みだぶつほんがんねんぶつ
南無阿弥陀仏のみおしえは阿弥陀仏の本願念仏の法は、
弥陀仏の本願念仏は
42邪見憍慢悪衆生
じゃけんきょうまんなくしゅじょう
おごり・たかぶり・よこしまのよこしまな考えを持ち、おごりたかぶる自力のものが
邪見・憍慢・悪衆生
43信楽受持甚以難
しんぎょうじゅじじんになん
はかろう身にて 信ぜんに信じることは実に難しい
信楽受持すること甚だもって難し
44難中之難無過斯
なんちゅうしなんむかし
難きがなかにも なおかたし難の中の難であり、これ以上に難しいことはない
難のなかの難これにすぎたるはなしカタ

依釈段

45印度西天之論家
いんどさいてんしろんげ
七高僧は ねんごろにインドの菩薩方や
印度西天の論家
46中夏日域之高僧
ちゅうかじちいきしこうそう
釈迦のみこころ あらわして中国と日本の高僧方が
中夏(中国)・日域(日本)の高僧
47顕大聖興世正意
けんだいしょうこうせしょうい
弥陀の誓いを 正機(めあて)をば釈尊が世に出られた本意をあらわし
大聖(釈尊)興世の正意を顕し
48明如来本誓応機
みょうにょらいほんぜいおうき
われらにありと あかします阿弥陀仏の本願は、私たちのために建てられたことを明らかにされた
如来の本誓、機に応ぜることを明かす
49釈迦如来楞伽山
しゃかにょらいりょうがせん
楞迦の山に 釈迦説けり釈尊は楞伽山で
釈迦如来、楞伽山にして
50為衆告命南天竺
いしゅうごうみょうなんてんじく
南天竺に 比丘ありて大衆に、南インドに
衆のために告命したまはく
51龍樹大士出於世
りゅうじゅだいじしゅっとせ
よこしまくじき 真実(まこと)のべ龍樹菩薩が現れて
南天竺(南印度)に龍樹大士世に出でて
52悉能摧破有無見
しつのうざいはうむけん
安楽国に うまれんと有無の邪見をすべて打ち破り
ことごとくよく有無の見を摧破せん
53宣説大乗無上法
せんぜつだいじょうむじょうほう
みことのまゝに あらわれし尊い大乗の法を説き
大乗無上の法を宣説し
54証歓喜地生安楽
しょうかんぎじしょうあんらく
龍樹大士は おしえます歓喜地の位に至って、阿弥陀仏の浄土に往生するだろうと仰せになった
歓喜地を証して安楽に生ぜんと
55顕示難行陸路苦
けんじなんぎょうろくろく)
陸路(くがじ)のあゆみ 難けれど龍樹菩薩は、難行道は苦しい陸路のようであると示し、
難行の陸路、苦しきことを顕示して
56信楽易行水道楽
しんぎょういぎょうしいどうらく
船路の旅の 易きかな易行道は楽しい船旅のようであるとお勧めになる
易行の水道、楽しきことを信楽せしむ
57憶念弥陀仏本願
おくねんみだぶつほんがん
弥陀の誓いに 帰しぬれば阿弥陀仏の本願を信じれば
弥陀仏の本願を憶念すれば
58自然即時入必定
じねんそくじにゅうひつじょう
不退のくらい 自然なりおのずからただちに正定聚に入る
自然に即の時必定に入る
59唯能常称如来号
ゆいのうじょうしょうょらいごう
ただよくつねに み名となえただ常に阿弥陀仏の名号を称え
ただよくつねに如来の号を称して
60応報大悲弘誓恩
おうほうだいひぐぜいおん
ふかきめぐみに こたえかし本願の大いなる慈悲の恩に報いるがよいと述べられた
大悲弘誓の恩を報ずべしといへり
61天親菩薩論註解
てんじんぼさつぞうろんせつ
天親菩薩 論を説き天親菩薩は、『浄土論』を著して
天親菩薩、『論』(浄土論)を造りて説かく
62帰命無碍光如来
きみょうむげこうにょらい
ほとけのひかり 仰ぎつゝ「無碍光如来に帰命したてまるつる」と述べられた
無礙光如来に帰命したてまつる
63依修多羅顕真実
えしゅたらけんしんじつ
おしえのまこと あらわして浄土の経典にもとづいて阿弥陀仏のまことをあらわされ
修多羅によりて真実を顕して
64光闡横超大誓願
こうせんおうちょうだいせいがん
弥陀の誓いを ひらきます横超のすぐれた誓願を広くお示しになり
横超の大誓願を光闡す
65広由本願力回向
こうゆほんがんりきえこう
本願力の めぐみゆえ本願力の廻向によって
広く本願力の回向によりて
66為度群生彰一心
いどぐんじょうしょういっしん
ただ一心の 救いかなすべてのものを救うために、一心すなわち他力の信心の徳を明らかにされた
群生を度せんがために一心を彰す
67帰入功徳大宝海
きにゅうくどくだいほうかい
ほとけのみ名に 帰してこそ本願の名号に帰し、大いなる功徳の海に入れば
功徳大宝海に帰入すれば
68必獲入大会衆数
ひつぎゃくにゅうだいえしゅしゅ
浄土の聖衆(ひと)の かずに入れ浄土に往生する身とさだまる
かならず大会衆の数に入ることを獲
69得至蓮華蔵世界
とくしれんげぞうせかい
蓮華(はちす)の国に うまれては阿弥陀仏の浄土に往生すれば
蓮華蔵世界に至ることを得れば
70即証真如法性身
そくしょうしんにょほっしょうじん
真如のさとり ひらきてぞただちに真如をさとった身となり
すなはち真如法性の身を証せしむと
71遊煩悩林現神通
ゆうぼんのうりんげんじんずう
生死の薗に かえりきてさらに迷いの世界に還り、神通力をあらわして
煩悩の林に遊んで神通を現じ
72入生死園示応化
にゅうしょうじおんじおうげ
まよえる人を 救うなり自在に衆生を救うことができると述べられた
生死の園に入りて応化を示すといへり
73本師曇鸞梁天子
ほんしどんらんりょうてんし
曇鸞大師 徳たかく曇鸞大師は梁の武帝が
本師曇鸞は、梁の天子
74常向鸞処菩薩礼
じょうこうらんしょぼさつらい
梁の天子に あがめらる常に菩薩と仰がれた方である
つねに鸞の処に向かひて菩薩と礼したて
75三蔵流支授浄教
さんぞうるしじゅじょうきょう
三蔵流支に みちびかれ菩提流支三蔵から浄土の経典を授けられたので
三蔵流支、浄教を授けしかば
76焚焼仙経帰楽邦
ぼんじょうせんぎょうきらくほう
仙経すてて 弥陀に帰す仙経を焼き捨てて浄土の教えに帰依された
仙経を焚焼して楽邦に帰したまひき
77天親菩薩論註解
てんじんぼさつろんちゅうげ
天親の論 釈しては天親菩薩の『浄土論』を注釈して
天親菩薩の『論』(浄土論)を註解して
78報土因果顕誓願
ほうどいんがけんせいがん
浄土にうまるる 因も果も浄土に往生する因も果も阿弥陀仏の誓願によることを明らかにし
報土の因果誓願に顕す
79往還回向由他力
おうげんえこうゆたりき
往くも還るも 他力ぞと往相も還相も他力の廻向であると示された
往還の回向は他力による
80正定之因唯信心
しょうじょうしいんゆいしんじん
ただ信心を すすめけり浄土へ往生するための因は、ただ信心一つである
正定の因はただ信心なり
81惑染凡夫信心発
わくぜんぼんぶしんじんぽう
まどえる身にも 信あらば煩悩具足の凡夫でもこの信心を得たなら
惑染の凡夫、信心発すれば
82証知生死即涅槃
しょうちしょうじそくねはん
生死(まよい)のままに 涅槃(すくい)あり仏のさとりを開くことができる
生死すなはち涅槃なりと証知せしむ
83必至無量光明土
ひっしむりょうこうみょうど
ひかりの国に いたりては計り知れない光明の浄土に至ると
かならず無量光明土に至れば
84諸有衆生皆普化
しょうしゅじょうかいふけ
あまたの人を 救うべしあらゆる迷いの衆生を導くことができると述べられた
諸有の衆生みなあまねく化すといへり
85道綽決聖道難証
どうしゃくけつしょうどうなんしょう
道綽禅師 あきらかに道綽禅師は、聖道門の教えによってさとるのは難しく
道綽、聖道の証しがたきことを決して
86唯明浄土可通入
ゆいみょうじょうどかつうにゅう
聖道浄土の 門(かど)わかち浄土門の教えによってのみさとりに至ることができることを明らかにされた
ただ浄土の通入すべきことを明かす
87万善自力貶勤修
まんぜんじりきへんごんしゅ
自力の善を おとしめて自力の行はいくら修めても劣っているとして
万善の自力、勤修を貶す
88円満徳号勧専称
えんまんとくごうかんせんしょう
他力の行を すすめつゝひとすじにあらゆる功徳をそなえた名号を称えることをお勧めになる
円満の徳号、専称を勧む
89三不三信誨慇懃
さんぷさんしんけんおんごん
信と不信を ねんごろに三信と三不信の教えを懇切に示し
三不三信の誨慇懃にして
90像末法滅同悲引
ぞうまつほうめつどうひいん
末の世かけて おしえます正法・像法・末法・法滅、何時の時代においても、本願念仏の法は変わらず人々を救い続けることを明かされる
像末・法滅同じく悲引す
91一生造悪値弘誓
いっしょうぞうあくちぐぜい
一生悪を 造るともたとえ生涯悪をつくり続けても、阿弥陀仏の本願を信じれば
一生悪を造れども、弘誓に値ひぬれば
92至安養界証妙果
しあんにょうがいしょうみょうか
弘誓に値(あ)いて 救わるる浄土に往生しこの上ないさとりを開くと述べられた
安養界に至りて妙果を証せしむといえり
93善導独明仏正意
ぜんどうどくみょうぶっしょうい
善導大師 ただひとり善導大師はただ独りこれまでの誤った説を正して仏の教えの真意を明らかにされた
善導独り仏の正意をあきらかにせり
94矜哀定散与逆悪
ごうあいじょうさんよぎゃくあく
釈迦の正意を あかしてぞ善悪のすべての人を哀れんで、
定散と逆悪とを矜哀して
95光明名号顕因縁
こうみょうみょうごうけんいんねん
自力の凡夫 あわれみて光明と名号が縁となり因となってお救いくださると示された
光明・名号因縁を顕す
96開入本願大智海
かいにゅほんがんだいちかい
ひかりとみ名の 因縁(いわれ)説く本願の大いなる智慧の海に入れば
本願の大智海に開入すれば
97行者正受金剛心
ぎょうじゃしょうじゅこんごうしん
誓いの海に 入りぬれば行者は他力の信を廻向され
行者まさしく金剛心を受けしめ
98慶喜一念相応後
きょうきいちねんそうおうご
信をよろこぶ 身となりて如来の本願にかなうことができたそのときに
慶喜の一念相応して後
99与韋提等獲三忍
よいだいとうぎゃくさんにん
韋提のごとく 救われる韋提希と同じく喜忍・悟忍・信忍の三忍を得て、
韋提と等しく三忍を獲
100即証法性之常楽
そくしょうほうしょうしじょうらく
やがてさとりの 花ひらく浄土に往生してただちにさとりを開くと述べられた
すなはち法性の常楽を証せしむといへり
101源信広開一代教
げんしんこうかいいちだいきょう
源信和尚 弥陀に帰し源信和尚は、釈尊の説かれた教えを広く学ばれて
源信広く一代の教を開きて
102偏帰安養勧一切
へんきあんにょうかんいっさい
おしえかずある そのなかにひとえに浄土を願い、また世のすべての人々にもお勧めになった
ひとへに安養に帰して一切を勧む
103専雑執心判浅深
せんぞうしゅうしんはんせんじん
真実報土(まことのくに)に うまるるはさまざまな行をまじえて修める自力の信心は浅く化土にしか往生できないが、
専雑の執心、浅深を判じて
104報化二土正弁立
ほうけにどしょうべんりゅう
深き信にぞ よると説く念仏一つをもっぱら修める他力の信心は深く、報土に往生できると明らかに示された
報化二土まさしく弁立せり
105極重悪人唯称仏
ごくじゅうあくにんゆいしょうぶつ
罪の人々 み名をよべきわめて罪の重い悪人はただにち念仏すべきである
極重の悪人はただ仏を称すべし
106我亦在彼摂取中
がやくざいひっしゅちゅう
われもひかりの うちにありわたしもまた阿弥陀仏の光明の中に摂め取られているけれども
われまたかの摂取のなかにあれども
107煩悩障眼雖不見
ぼんのうしょうげんすいふけん
まどいの眼には 見えねども煩悩が私の目をさえぎって、見たてまつることができない。しかしながら
煩悩、眼を障へて見たてまつらずといへども
108大悲無倦常照我
だいひむけんじょうしょうが
ほとけはつねに 照らします阿弥陀仏の大いなる慈悲の光明は、そのような私を見捨てることなく常に照らしていてくださると述べられた
大悲、倦きことなくしてつねにわれを照らしたまうといえり
109本師源空明仏教
ほんしげんくうみょうぶっきょう
源空上人 智慧すぐれ源空聖人は深く仏の教えをきわめられ
本師源空は、仏教にあきらかにして
110憐愍善悪凡夫人
れんみんぜんまくぼんぶにん
おろかなるもの あわれみて善人も悪人もすべての凡夫を哀れんで
善悪の凡夫人を憐愍せしむ
111真宗教証興片州
しんしゅうきょうしょうこうへんしゅう
浄土真宗 おこしてはこの国に往生浄土の真実の教えを開いて明らかにされ
真宗の教証、片州に興す
112選択本願弘悪世
せんじゃくほんがんぐあくせ
本願念仏 ひろめます選択本願の法を五濁の世にお広めになった
選択本願、悪世に弘む
113還来生死輪転家
げんらいしょうじりんでんげ
まよいの家に かえらんは迷いの世界に輪廻することは
生死輪転の家に還来ることは
114決以疑情為所止
けっちぎじょういしょし
疑(うたご)う罪の あればなり本願を疑いはからうからである
決するに疑情をもつて所止とす
115速入寂静無為楽
そくにゅうじゃくじょうむいらく
さとりの国に うまるるは速やかにさとりの世界に入るには
すみやかに寂静無為の楽に入ることは
116必以信心為能入
ひっちしんじんいのうにゅう
ただ信心に きわまりぬただ本願を信じる他にはないと述べられた
かならず信心をもつて能入とすといえり
117弘経大士宗師等
ぐきょうだいじしゅしとう
七高僧は あらわれみて浄土の教えを広めてくださった祖師方は
弘経の大士・宗師等
118拯済無辺極濁悪
じょうさいむへんごくじょくあく
われらをおしえ すくいます数限りない五濁の世の衆生をみなお導きになる
無辺の極濁悪を拯済したまふ
119道俗時衆共同心
どうぞくじしゅうぐどうしん
世のもろびとよ みなともに出家のものも在家のものも今の世の人々はみなともに
道俗時衆ともに同心に
120唯可信斯高僧説
ゆいかしんしこうそうせつ
このみさとしを 信ずべしただこの高僧方の教えを仰いで信じるがよい
ただこの高僧の説を信ずべしと
おすすめ
法話

私たちが日頃お経をとなえる時に読んでいるのは「正信偈」というお経です。 「帰命無碍光如来 南無不可思議光」(きみょうむりょうじゅにょらい なもふかしぎこう) とお唱えします。これはどういう意味でしょう ...

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五劫思惟之摂受 重誓名声聞十方

(意訳)五劫もの長い間、思惟してこの誓願を選び取り、名号をすべての世界に聞こえさせようと重ねて誓われたのである。 (書き下し)五劫これを思惟して摂受す。重ねて誓うらく名声十方に聞えんと 語句の解説から申しましょう。 五劫とは、ものすごく長い時間を表しています。「劫」は、天女が3年に1度(諸説あり 100年とも言われる)地上に舞い降りてきて、40里(157キロ)に相当する、巨大な岩を 羽衣の裾で撫でて磨耗により消滅させるまでの時間といわれる。 つまり五劫なので5倍の時間がかかる訳でありますが、真に受けてどれ ...

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覩見諸仏浄土因  国土人天之善悪

意訳「仏がたの浄土の成り立ちや、その国土や人間や神々の善し悪しをご覧になって」 書き下し「諸仏の浄土の因、国土人天の善悪を覩見して」 阿弥陀仏が法蔵菩薩であった頃の話になります。 法蔵菩薩が世自在王仏の元で、たくさんの浄土の成り立ちや、 その国土に住む方々の善し悪しをご覧になります。 仏教では、一神教ではありません。計り知れないほどの仏様がいて、 その数だけ仏の浄土も計り知れないほどあると考えます。その中で、 法蔵菩薩はこの上ないさとりをひらくために、すべての諸仏の浄土をご覧になります。 「覩」とは、よく ...

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法蔵菩薩因位時 在世自在王仏所

法蔵菩薩因位時 在世自在王仏所 (意訳)昔々、ある王様が世自在王仏の話を聞いて、深く感動し出家されて、 法蔵と名乗られ、世自在王仏の所で修行に明け暮れていた時 (書き下し)法蔵菩薩の因位の時、世自在王仏のみもとにましまして 意訳をみて驚かれる方も多いのではないでしょうか。 この原文だけを見て、意訳が分かるということはありません。 実は(「法蔵菩薩因位時」から)阿弥陀様が悟りを開いていないときから、 (「必至滅度願成就」まで)悟りを開くまでの話が書かれてあります。 その悟りを開くまでの背景がありまして、「法 ...

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五濁悪時群生海 応信如来如実言

(書き下し)五濁悪時の群生海、如来如実の言を信ずべし (現代語訳)五濁の世の人々は、釈尊のまことの教えを信じるがよい 五濁について ・劫濁とは、対立や戦争の絶え間ない時代の濁り ・見濁とは、仏の教法を否定してかえりみない思想の濁り ・煩悩濁とは、五欲の追求に飽くことない思想の濁り ・衆生濁とは、人間の資質が低下して邪悪な行為の増える衆生の濁り ・命濁とは、生を愛しつつも、いのちを粗末にし、生死の問題をおろそかにするありさま この五濁とは、阿弥陀経にも説かれている事なのでご覧になってください。 お経の終盤に ...

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そもそも正信偈とは何でしょうか

「帰命無量寿如来」  (きみょ~むりょ~じゅにょらい~)から始まる、親鸞聖人が考えられた今でいう歌であります。 お経を見るとふりがなはあるけど、漢字ばかりで全然意味が伝わってこないと思います。しかし、鎌倉時代では漢語で本を書くこともあったので、日本人が書いたものでも全部漢字という書物はじつはたくさんあります。 親鸞聖人はわざと難しい本を作ってやろうという意地悪な考えで作られた訳ではなく、漢字で書くことが普通の時代でありました。その内容については、阿弥陀様の話・釈尊の話・7人の高僧の話について書かれてありま ...

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建立無上殊勝願 超発希有大弘誓

(意訳)最高にすぐれた願をお立てになり 世にまれな大いなる誓願をおこされた   (書き下し)無上殊勝の願を建立し 希有の大弘誓を超発せり   願とは、阿弥陀様の全ての衆生を救うという願いであり、誓いであります。 誓願とは、すべての菩薩に共通する願い、誓いであります。   私も願いや誓いをすることはあっても、その範囲は私の身の回りであって、 隅々までいきわたるような願いは持てません。 私の視野は、それほど狭いのです。 裏を返すと、その願いや誓いは私の周りだけ幸せになるのであれば ...

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正信偈

解説と現代語訳 「正信念仏偈」は、親鸞聖人(1173年〜1263年)が90年の生涯をかけて作られた著書『教行信証』(全六巻本)の第2巻「行巻」の末尾に掲載されている。一般には「正信偈(しょうしんげ)」の名で親しまれている。真宗の要義大綱を七言60行120句の偈文にまとめたものである。 親鸞聖人撰述の『三帖和讃』とともに、本願寺第8世蓮如(1415年〜1499年)によって、僧俗の間で朝暮の勤行としてお勤めするよう制定され、現在も行われている。 下記の表のデータ(エクセル資料)ご自由にお使い下さい 20150 ...

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-正信偈

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